はじめに

近年の気候変動により、日本の夏は年々過酷さを増しています。猛暑日（35℃以上）の増加にともない、農業現場では「高温障害」による品質低下・収量減・生育不良といった深刻な問題が広がっています。

本記事では、農業従事者の皆さまに向けて、作物を高温ストレスから守るための最新の対策をわかりやすく解説します。

高温障害とは？そのメカニズムと影響

高温障害とは、作物が適正な生育温度を超えることで生理機能が乱れ、さまざまな生育障害を引き起こす現象です。

• 光合成の低下：気孔閉鎖によるCO₂吸収不足
• 呼吸の亢進：糖の消耗による成長停滞
• 花芽分化の阻害：収穫量の著しい低下
• 着果・肥大不良：ホルモンバランスの乱れ
• 果実品質の低下：日焼け、奇形果など
• 根系の損傷：高地温による吸水・吸肥不良

高温対策の実践ポイント

1. 遮光・反射資材の活用

• 遮光ネット（30〜50％）で日射を緩和
• 白黒マルチ・反射シートで地温を抑制
• 寒冷紗と防虫ネットの併用も有効

2. 潅水の工夫

• 朝夕の涼しい時間に潅水
• 点滴潅水による水分効率向上
• 酸素ナノバブル水で根圏の酸素環境を改善

3. 換気・通気の徹底（施設栽培）

• 天窓・側窓・換気扇の適切な管理
• 循環扇・ミストファンで空気を撹拌

4. 耐暑性品種・台木の導入

• 暑さに強い品種の選定
• 根圏を安定させる強健台木の利用

5. 肥培管理の見直し

• 分割施肥で根への負担軽減
• 葉面散布による栄養補給
• 堆肥や有機物による地温・保水対策